03


「お前経験は?」

「…っ、ねぇよ」

他人は信用できない。
誰が己の全てを曝し、委ねるようなそんな行為が出来るというのだ。

猛は俺の台詞にへぇ、と瞳を細め、俺の着ていた服に手を突っ込んできた。

「じゃぁこの身体はまだまっさらってワケだ。くくっ、ますます気に入ったぜ。一から俺好みに仕上げられるな」

肌を撫でられ、ゾワリと鳥肌がたった。

「……っ」

「安心しろ。お前が抵抗しなきゃ優しくしてやる」

耳元で腰にクる様な低音を囁かれ、耳朶を甘噛みされる。

「んっ。…こんなことしてアンタに何の得がある。何も無いだろ?」

五千万という大金を払ってまで俺を買う意味がどこにある。

俺にはもう何も残されていないというのに。

「意味が欲しいか?」

再び唇を重ねられ、吐息さえも奪われる。

「…ふっ…ん…んっ」

固く閉ざした瞼からは苦しくて生理的な涙が溢れ落ちた。

「んっ…ぁ…、はぁ、はぁ…」

口付けが止むと同時に服の中に侵入した猛の手が悪戯に動き始めた。

胸の飾りを摘ままれ、ぐりぐりと指先で捏ねられる。

「ぁ…」

自分の意思とは裏腹に、鼻にかかったような甘ったるい声が口から上がった。

「一晩、お前を抱く毎に五万」

「…っぁ…なん…だよソレ」

「意味が欲しいんだろ?だからくれてやる」

ここにいるのは返済の為。お前は五千万という大金を俺に肩代わりしてもらったと思ってりゃいい。それを返す為にお前は俺に抱かれる。

普通に返されるよりこの方が楽しめるだろ?

一晩、抱かれる毎に五万。早くて凡そ二年と270日。

俺の冷静な部分が瞬時にその計算式を弾き出した。

俺は最低でもここに約三年はいなくてはならない。

「無駄話は終わりだ。こっちに集中しろ」

シャツを脱がされ、散々弄られた胸の飾りを今度は口に含まれ、舌先で刺激される。

「んっ…く…」

既に拘束を外されている手で口元を抑え、変な声が出ないよう塞ぐ。

羞恥で頬を朱に染め、刺激により切なそうに柳眉を寄せた俺を見て猛は喉の奥で笑う。

「いいぜ。もっとその顔見せろ」

胸から顔を離し、噛みつきたくなる衝動に駆られながら目の前に惜し気もなく晒された白い首筋を下から上に向かって舐める。

「んぅ!?」

首筋にザラザラとした感触を受け、俺はびくりと肩を震わせた。

そして、カチャリと金属音がしてベルトが抜き取られたのが分かった。

俺は次にされるであろう行為を思ってぎゅっと目を瞑った。

「経験は無くても、なんとなく分かってるようだな。本能ってやつか」

侵入してきた猛の大きな掌が、下着の上から俺の分身をやわやわと刺激してくる。

「…ぅ…はぁ…ぁ…んっ」

「ククッ、濡れてきたな」

下着の中がベトベトして気持ち悪い。

その不快な感触に俺は顔をしかめた。

「ん…はっ…」

「直に触って欲しいか?」

俺の様子を楽しむように猛は口元に弧を描き、俺を見下ろしてそう聞いてきた。

望んでヤられているワケでもない俺はその問い掛けに、顔を横に向けて無視した。

「フッ、今日は許してやるか」

下着から猛の手が離れ、ホッと安堵したのも束の間。

「んぁ!…ぁっ…ぁ…やっ」

一気にズボンと下着を下ろされ、直に握り込まれた。

激しく上下にスライドさせられ、先端から蜜が溢れる。

「…や、…ぁ…はぁ…ぁっ…」

口を覆っていた手から抑えきれない、甘い声が漏れる。

「はっ、すっげぇ良い声」

首筋から順にちゅっ、と紅い華を咲かせつつ、猛は手を動かす。

「ぁっ…ぁ…もっ…や…だっ…」

自身から溢れ出た蜜がぐちゅぐちゅと音を立て、猛の指を汚す。

初めて他人から受けた愛撫は強烈で、俺は何も考えられなくなっていた。

身体は火照り、渦巻く熱が出口を求めてさ迷う。

「イきそうだな」

猛は掌に包んだモノがビクビクと震え出したのに気付き手を止める。

「…ぁっ…なん…」

もう少しでイきそうだったのを止められ、思わず呟いてしまう。

「心配すんな、ちゃんとイカせてやる」

フッ、と分身に息を吹き掛けられ身体がブルリと震えた。

猛はまた軽く手をスライドさせ始めた。

「…あぁ…ぁ…ぁっ…」

そして、仕上げとばかりに俺のモノの先端を強く親指でぐりぐりと弄った。

「やっ…ぁ…あぁっ―――!!!」

どくんっ、と身体を大きくしならせ、俺は大量の熱を放った。



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